都電を追って…

「東京の町なかを網の目のように都電が走っていた時代のことは、もう余り知る人がいない。
たかだか三十年前の話なのだけれど、その間にたくさんの人口が流動し、それと同じ数だけの先住者が代謝してしまったせいで、昔を知る人がいなくなったのだろう。
唯一、早稲田から三ノ輪橋まで、文化財のような路面電車が動いているが、あれはもともと交通の障害にならないような場所を選んで走っていた路線だから、今さら乗ってみたところでさほど往時の雰囲気をしのぶことはできない。ともかく、僕の子供のころには、東京中の道路という道路に、おそらく世界最大のネットワークであったにちがいない都電が、黄色い箱を並べて走り回っていた。」

日曜日の山サイの帰り、浅田次郎の「霞町物語」という短編集の一節、「青い火花」を足組んで読んでいました。強情だけどもう呆けてしまっている写真師の「おじいちゃん」とその弟子で、娘婿でもある心優しい「父」の物語です。

戦後の高度経済成長期、地下鉄やバス路線の発達にともなって、当時都民の足回りとなっていた都電は次々と撤退を余儀なくされていきました。
主人公「僕」のおじいちゃんはかつての名カメラマンであり、肖像写真を撮る写真館を営んでいましたがこちらも、需要の激減とフィルムカメラの普及によって廃業寸前に追いやられていました。しかし、おじいちゃんは時代の要請には応えず、頑なに新しい機材を拒んだり、都電廃止に反対するビラを配ったりしていました。

都電のある風景と、ボケてしまったおじいちゃんの描写に感情移入するところがあり、温かいいい話なんです~~。

いよいよ近所を走る都電も廃線となり、車両に装飾を施した最後の花電車が走ることになります。おじいちゃんと父は最後の都電の姿を写真におさめるために出かけます。

「2台のストロボと同時に、都電のパンタグラフから稲妻のような青い火花が爆ぜた、昼間のような一瞬の閃光の中で、電車はそのまま止まってしまったように見えた」

もうボケてしまっていて、まともに写真が取れないはずのおじいちゃんが、その時ばかりは若かったころの精気を取り戻して、まるで別人のようにシャンとして弟子の父を指図します。

おじいちゃんはまともな写真を取ることができなくなっていため、父は期待せずに写真を現像します。
すると、なんと現像液の中に溜息をつくほどすばらしい花電車が浮かび上がったのでした。

「おまえの撮る写真は道具さえ揃や誰だって撮れる。つまり、おまえは優しさが足んねえ。」
この言葉で父は写真家としての姿勢を改めます。

物語のおじいちゃんはスタジオの籘椅子の上でライカを抱えたまま亡くなってしまうのですが、駆けつけた父がそれを取り上げて、胸に抱きしめてわあわあと泣く描写がとても切なく感動的でした。

何でしょう。精気を取り戻したご老人には底知れぬパワーや頼もしさがある気がします。
ウチのおじいちゃんもぼけ気味で、「百七十いくつになった?」
「171cmだよ」「いい時代に生まれたね」というやりとりを何十回としましたが、それでも、たまに仕事の話を聞くと、かっこよく働いていた時期があったんだとハッとさせられることがあります。

さてさて次の日、めっちゃ雪が降っていたので都電沿いを早稲田から三ノ輪橋まで雪上ライドすることにしました。
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(千歳橋から)直線距離が長いここが今で言う「都電が往年の力を存分に発揮できる場所」なのかな。

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ぬくもりがありますな。
新宿の某ショップで働いているというマウンテンバイカーに出くわした。

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17::00大塚駅。だいぶ降っている。

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王子駅近く。飛鳥山公園に「黄色い箱」がありました。ここでもマウンテンバイカーに出くわす。

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だいぶ積もってきた。

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23:00下町の風情を感じた足立区小台。車が大渋滞している。

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たまりかねて町屋駅前でリタイヤ。カラオケで暖をとることにしました。
冬の北海道でソロツーリングをしたというlongislandさんは本当に強靭なメンタルの持ち主だと思った。

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翌朝5:00。そろそろ終点..

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終点三ノ輪橋駅。パンタグラフから出る青い閃光は健在だった。

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太陽が出てから、銀世界を堪能して帰りました。

それにしても、雪上を走っていたおかげで、一晩でだいぶバランス感覚が研ぎ澄まされたと思う。滑って倒れそうになりながら逆方向にハンドルを切ってぐるぐる足を回すと見事に持ち堪えるのだ。その感覚がとても楽しく夜中の雪道でけらけら笑っていた。
「自転車」とはよく言ったもので、こいつはまさに自ら転ぶ車だ。しかし、自ら転がる車でもある。そう、転びながら転がり続ける。それが自転車であり、その醍醐味を存分に味わうことができるのがマウンテンバイクではないだろうか?まるで澄み切った冬空のように僕のバランス感覚にも磨きをかけていきたい。 爆爆

ちょっと調子に乗りましたゴメンナサイヽ(・∀・)ノ(byおうた)

都電を追って…」への4件のフィードバック

  1. 匿名

    素敵やん!
    そういえば、スキー場を自転車で下る、雪チャリナイターってイベントがあるよ

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  2. ヒロセ

    おうた先生、いい文でした。
    引っ越して山が近くなったので春になったら行きましょう。

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    1. おうた

      あ、ありがとうございます!!
      山、行きましょう!体力つけておかないとですね。

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